13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


何も答えないで…。

自分から聞いておきながら、心の中ではそう願った。

だけど、私の願いとは裏腹に翔は口を開く。

「走って来なくていい…ってメール来たんだ」
「は…?」

内容の意味が理解出来ない。
そんな私に、翔は丁寧に説明を始めた。

「俺さ、毎日放課後に2年の教室走って行ってたんだ」
「…」
「初めの方は、何てゆーか…避けられてて…早く行かなきゃ、先輩先に帰ってた」
「だから、毎日急いでたの?」

翔がいつも慌ただしく教室を出て行くのは知っていた。

「そう。でさ…さっき、“走って来なくていいよ”ってメールが来たんだ」

翔は嬉しそうに続ける。

「これってさ、先輩との距離ちょっと縮んだ感じしねぇ?」

満面の笑みを浮かべて、幸せそうな翔。
その姿に私は苛立って、

「そぉ?」

思わず否定する。

「そぉだろ!俺の事待ってくれるって事じゃん!」
「えー?もう来んなって意味じゃないの?」

メールの前後のやり取りを知らないから、どんな意味かなんて私が知る余地もない。
だけど、とにかく否定したい意地悪な自分が居た。

すると、翔の表情は急に冷めた物に変わった。

「あー…檜山に言ったのがバカだった!」
「なっ…!」

私は言い返そうとしたけど、次に発せられた翔の言葉に絶句した。