13センチの片想い。私とアイツの恋の距離

☆翔side☆


「ううん。それだけ」

波の音が鮮明に聞こえる静かな海に、檜山の声が響くように聞こえた。

それだけ……?

頭の中で聞き返した俺に、答えるみたいに、

「話聞いてくれてありがと」

と、檜山は軽く笑って“それだけ”だと裏付ける。

「……」

何でだろう。声が出ない。

さっきの“ありがとう”は嬉しかったのに、今の“ありがとう”は嬉しくない。

目の前の檜山は、何食わぬ顔でケータイを開いて見ている。

そして、

「あっ、そろそろ戻んなきゃヤバイよ」

焦った声を出すと、ホテルに戻る方向へ向いた。

あっさりと向けられた背中。

それを見つめて感じたのは、胸に何かが詰まる……そんな鈍い痛み。

嫌だって思った。
“それだけ”なんて嫌だと。

だから、

「……檜山っ」

檜山が足を一歩進めたその瞬間、俺は腕を掴んで引き止めた。

「俺っ……」

言いたいことがあった。

なのに、それ以上言葉を続けられなかった。


振り向いた檜山の顔が、

今にも泣きそうなものだったから――。