☆翔side☆
「ううん。それだけ」
波の音が鮮明に聞こえる静かな海に、檜山の声が響くように聞こえた。
それだけ……?
頭の中で聞き返した俺に、答えるみたいに、
「話聞いてくれてありがと」
と、檜山は軽く笑って“それだけ”だと裏付ける。
「……」
何でだろう。声が出ない。
さっきの“ありがとう”は嬉しかったのに、今の“ありがとう”は嬉しくない。
目の前の檜山は、何食わぬ顔でケータイを開いて見ている。
そして、
「あっ、そろそろ戻んなきゃヤバイよ」
焦った声を出すと、ホテルに戻る方向へ向いた。
あっさりと向けられた背中。
それを見つめて感じたのは、胸に何かが詰まる……そんな鈍い痛み。
嫌だって思った。
“それだけ”なんて嫌だと。
だから、
「……檜山っ」
檜山が足を一歩進めたその瞬間、俺は腕を掴んで引き止めた。
「俺っ……」
言いたいことがあった。
なのに、それ以上言葉を続けられなかった。
振り向いた檜山の顔が、
今にも泣きそうなものだったから――。
「ううん。それだけ」
波の音が鮮明に聞こえる静かな海に、檜山の声が響くように聞こえた。
それだけ……?
頭の中で聞き返した俺に、答えるみたいに、
「話聞いてくれてありがと」
と、檜山は軽く笑って“それだけ”だと裏付ける。
「……」
何でだろう。声が出ない。
さっきの“ありがとう”は嬉しかったのに、今の“ありがとう”は嬉しくない。
目の前の檜山は、何食わぬ顔でケータイを開いて見ている。
そして、
「あっ、そろそろ戻んなきゃヤバイよ」
焦った声を出すと、ホテルに戻る方向へ向いた。
あっさりと向けられた背中。
それを見つめて感じたのは、胸に何かが詰まる……そんな鈍い痛み。
嫌だって思った。
“それだけ”なんて嫌だと。
だから、
「……檜山っ」
檜山が足を一歩進めたその瞬間、俺は腕を掴んで引き止めた。
「俺っ……」
言いたいことがあった。
なのに、それ以上言葉を続けられなかった。
振り向いた檜山の顔が、
今にも泣きそうなものだったから――。



