当然のように、きょとんとする私。だけど、
「檜山、力みすぎっ!」
笑いながら言われた言葉にハッとして、顔が真っ赤に染まる。
「う、うるさいっ!」
そんなの、私だって分かってるわよ。
あまりの恥ずかしさに、伏し目がちになる……と、
「どういたしまして」
目の前から聞こえた優しい声。
翔はにっこりと、人懐っこい笑顔を私に向けて、嬉しそうにしていた。
「っ……」
そんな笑顔……困る。
胸がギュッと苦しくなって、熱くなって……言いたい言葉が増えてしまう。
……好き。
“好き”って言いたい。
勢いとかじゃなくて、今度こそ……ちゃんと。
そしたら翔は、たぶん――。
「それと……ね……」
思いのままに動かした口。
あと一息、そんな所で私は言葉に詰まった。
月明かりに伸びた影。
それが不意に、現実を思い出させたから。
……だめ。言っちゃダメ。
だって私は――。
「……ううん。それだけ」
手の届かない時は、考えることなんてなかったこと。
手が届きそうになると、それが不安となって……邪魔をする。



