「ま、相手が檜山なのが残念だけど」
と、嫌味ったらしく笑った。
「……私だって」
小さく返事をしながら、不思議に思う。
いつもなら、こんなことを言われれば、胸がチクンと痛むのに……今日は平気。
それどころか、キュンとなる。
理由はきっと、翔の声色と笑顔が、とても優しいから。
本心からの言葉じゃない……って、分かってしまう態度だから。
「それでさ……話って何?」
何となく言葉を失って、しばらく黙って海を眺めていた私達。
その沈黙を破ったのは、翔の方だった。
「あ……えっと……」
話があると呼び出したのは、私。
だけど、あまりに穏やかな時間が続いたものだから、緊張を忘れかけていて。
話を急に切り出されて、静かな海が波立つように、私の心もざわついた。
身体中の血の廻りが、ドクンドクンと大きく感じて、気持ち悪い。
でも……言わなくちゃ。
今日こそ、ちゃんと。
決心した私は、スウッと息を吸い込んで、
「言うの、かなり遅くなっちゃったんだけど……藤原先輩と話したよ」
視線は海へ向けたまま、はっきりと告げた。



