余計な会話は一度もせず、切られた電話。
私は両手でケータイをギュッと握って、深く息を吐いた。
……やばい、緊張する。
電話だけでも、口から心臓が飛び出すんじゃないかってくらい緊張したのに、直接会って話すなんて……大丈夫だろうか。
絶対、大丈夫じゃない気がする……。
でも、もう逃げられない。
翔と約束してしまったからには、行くしかない。
よし、頑張ろう。
私は一歩、足を前に進めた。
ホテル一階の広いロビー。
噴水や観葉植物があって、綺麗に装飾されたその場所には、一般の宿泊者が幾らかいて。
何の用があってか分からないけど、うちの学校の生徒も何人かいた。
そして、ひとりがけのソファーに座って、ケータイをいじる男子。
そこには既に、翔の姿があった。
「呼び出したくせに遅い」
翔は私に気付くと、ケータイをパタンと閉じて、一言そう言った。
「……っ!翔が場所指定したんでしょ!」
咄嗟に言い返す私。
良かった……まだ普通に話せる。
自分の態度に、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、
「じゃあ行こっか」
そう言って翔は立ち上がった。



