13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


釣り合ってないって……何よ。

唇を噛んで、ギュッと握り拳を作る。

そんなの、言われなくても分かってるし。
自分が一番分かってるし。

でも――。


「あっ!佳奈ちゃん、いたいた!」

静かな廊下に、こだましそうなほど響いた声。

ビクッとして振り返ると、こっちに駆け寄って来る亜耶の姿があった。

「ごめんね、何か入れ違いになっちゃったみたいで……って、えっ!?」

私は亜耶の腕を掴んで、教室から早く離れようと、小走りになって進んでいた。


「佳奈ちゃん?……ねぇ、佳奈ちゃん、どうしたのっ?」

大人しく連れられながら、亜耶が心配の声を出す。

「ごめっ……」

つい手に力が入っていたことに気付いて、慌てて手を離した。

だけど亜耶は、そのことを咎めず、

「岡田くんと……何かあった?」

まるで子供に訊ねるような優しい声で聞いてくるから、息が詰まる思いがして、
私は少し間を置いた後……首を横に振った。

翔とは何もない。むしろ……。

落とした視線の先には、半分のたい焼きが入った小さな紙袋。

むしろ翔とは、上手くいってる気がする。

なのに、だけど、

「亜耶……やっぱ私、無理だ……」

翔に告白するなんて、私には出来ない……。


今さっきまで、とても甘かったはずの口の中は……

驚くくらいに苦くて、

甘さを思い出すことすら出来なくなっていた――。