釣り合ってないって……何よ。
唇を噛んで、ギュッと握り拳を作る。
そんなの、言われなくても分かってるし。
自分が一番分かってるし。
でも――。
「あっ!佳奈ちゃん、いたいた!」
静かな廊下に、こだましそうなほど響いた声。
ビクッとして振り返ると、こっちに駆け寄って来る亜耶の姿があった。
「ごめんね、何か入れ違いになっちゃったみたいで……って、えっ!?」
私は亜耶の腕を掴んで、教室から早く離れようと、小走りになって進んでいた。
「佳奈ちゃん?……ねぇ、佳奈ちゃん、どうしたのっ?」
大人しく連れられながら、亜耶が心配の声を出す。
「ごめっ……」
つい手に力が入っていたことに気付いて、慌てて手を離した。
だけど亜耶は、そのことを咎めず、
「岡田くんと……何かあった?」
まるで子供に訊ねるような優しい声で聞いてくるから、息が詰まる思いがして、
私は少し間を置いた後……首を横に振った。
翔とは何もない。むしろ……。
落とした視線の先には、半分のたい焼きが入った小さな紙袋。
むしろ翔とは、上手くいってる気がする。
なのに、だけど、
「亜耶……やっぱ私、無理だ……」
翔に告白するなんて、私には出来ない……。
今さっきまで、とても甘かったはずの口の中は……
驚くくらいに苦くて、
甘さを思い出すことすら出来なくなっていた――。



