13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「分かった。けど……」

チラッと後ろに目を向ける翔。
それを追うと、翔のことを呼ぶ男子の姿があった。

「あっ!後からでいいの!今度でもいいからっ!」

今の状況を忘れかけていた私。
急に恥ずかしくなって、「じゃあ、頑張って」と、一方的に話を終わらせ、背を向けた。


手の中には、温かなぬくもり。

5、6歩足を進めた所で振り返ってみると、楽しそうに男子と話す翔が目に映って、胸がキュッとなった。

翔のことが好きで……
些細なことが、幸せすぎて。


このことを亜耶に、「ありがとう」を込めて伝えたくて、周りを見渡してみる……と、今度は亜耶の姿がない。

それに、いつの間にか輪投げをやっていた場所は、綺麗に片付けられていた。

「もしかして亜耶探してる?」

通り過ぎようとした、バレー部の女子が聞いてきて、私が「うん」と頷くと、

「亜耶なら、教室に荷物片付けて来るって言ってたよ」

そう教えてくれた。


翔にもらったたい焼きを半分に割りながら、教室へと向かって歩く。

しっぽ側を口にくわえて、頭側はまた紙袋の中に戻した。

こっちは……亜耶に。