13センチの片想い。私とアイツの恋の距離



「……翔」

バレー部の敷地に戻った私は、裏側から翔を呼んだ。

「あっ、檜山!あの子どうなった?」

手にはたい焼きの生地が入ったボウルを持って、それをかき混ぜながら聞く翔。

その姿は何とも見慣れないもので、私はクスッと笑いながら、「ちゃんとお母さん見付かったよ」と返事した。

「そっか!良かった!」

嬉しそうに笑う翔。

翔のこういう、優しいところが好き。

「ありがとうって言ってたから。それじゃ……」

店番中、私が長く話しかけてるのはあまり良くない。
だからすぐ、この場から離れようとしたのだけど、

「檜山!ちょっと待って!」

翔が私の足にストップをかけた。

何……?

きょとんとする私を残して、翔はテントの奥へ……行ったと思ったら、白い小さな紙袋を持って戻って来た。

そして、

「やるっ!」

その紙袋は私に向かって、弧を描くように投げられた。

「っ!?」

反射的に受け取ったそれは温かくて、柔らかくて、一瞬驚くけど、
中身が何なのかは、袋を開けて見なくても分かった。

近くなった甘い匂い。

中身は……たい焼き。