姿を見た……それだけで、私の心臓はドクンと跳ねる。
落ち着かせるように息を吐いて、私は翔の元へ真っ直ぐ歩いて行った。
キョロキョロと、しきりに周りを見ている翔。
「……翔、翔っ!」
私は腕を掴んで呼んで、その視線を自分へと向けさせた。
「檜山……」
少し見上げて私を見る、翔の顔にドキッとする。
「みっ、店番サボって何してんのよ!?」
平常心を装おうとした声は、見事に裏返って、翔は少し笑った。
それによって、私の顔は更に赤く染まりそうになるけど……。
あれ……?
私が掴んだ腕とは反対側の、翔の手。
その手の先には……小さな手が繋がれていて、
「……その子、誰?」
翔の体を壁にして、ひょっこりと顔を出したのは、4、5歳くらいの女の子。
真っ赤になった顔に、潤んだ目、濡れた頬。
ついさっきまで泣いていただろうことは、聞かなくても分かる。
翔は一人っ子で、妹なんていないはず……。
まさか……。
「誘拐っ!?」
「んなわけねーだろっ!」
ちょっとふざけた回答は、何かが飛んで来そうな勢いで否定された。



