13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「…」

私は少し考えた後、急いで食事を口に運び始めた。隣や前に座る友達達の話は耳に入らない。
そして、最後の一口を口に入れるとそのまま立ち上がった。

「佳奈ちゃん?」
「何、どうしたの?」

私が急いでいたのに気づかなかったのだろうか、友達は不思議そうに私を見る。

「えっと…ちょっと先生に呼ばれてるから…先行くね」

決して上手い言い訳ではないけど、それしか思い浮かばなかった私は、不振に思われる前にすぐ背を向けた。

“翔を探してくる”

そう言うのは、咄嗟に危ないと思った。
うちのクラスには、翔の事をいい感じに思っている子が沢山いる。それが昨日判明したばかりだから。

外に出て翔を探す。
部屋に戻っていたらアウトだけど、まだ戻っていない…そんな気がしてた。
でも、辺りは暗く、何の頼りもないのに見つけるのは難しい。もう少ししたら、他の生徒達も出てくる。

早くしないと…。

あれ…?

急ぐ私の視界に光が入って来た。

山の中の合宿所。
周りは木や草に囲まれている。

ほんの少し離れた茂みの中に、
光が見える…。