13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


分かった、モヤモヤの理由。

藤原先輩に言いたくて、でも言えなくて……悔しかったことがひとつある。

当然驚いて振り向いた先輩に向かって、私はごくんと唾を飲み込んで、口を開いた。

「文也……ですよね?先輩の名前、文也ですよねっ!?」

「……」

目を丸くして、ポカンとする先輩。

だけど、すぐに目を細めて、顔をくしゃくしゃにして笑いながら、

先輩は両手で大きな丸を作った。


「佳奈ちゃん、ありがと!」

先輩の姿を見て、先輩の声が耳に届いて、私の口角も自然と上がる。

付き合っていながら、名前を知らないくらい……私は先輩に甘えてしまっていた。

“ひとりの男の人”として、きちんと考えていなければ、見れてもいなかった。

でも今は……ちゃんと見てる。

ちゃんと見て、私は私の気持ちに素直になって、今ここに立っている。


手を降ろして、先輩はまた背を向けようとしたけど……体半分で振り向いた。

「……ストラップ!もう外していいよ!」

「え……?」

「ずっと付けられてると、期待するから!」

「っ!!」

冗談混じりに苦笑する先輩に、私はストラップのことを知られていた恥ずかしさからか、赤くなる。