分かった、モヤモヤの理由。
藤原先輩に言いたくて、でも言えなくて……悔しかったことがひとつある。
当然驚いて振り向いた先輩に向かって、私はごくんと唾を飲み込んで、口を開いた。
「文也……ですよね?先輩の名前、文也ですよねっ!?」
「……」
目を丸くして、ポカンとする先輩。
だけど、すぐに目を細めて、顔をくしゃくしゃにして笑いながら、
先輩は両手で大きな丸を作った。
「佳奈ちゃん、ありがと!」
先輩の姿を見て、先輩の声が耳に届いて、私の口角も自然と上がる。
付き合っていながら、名前を知らないくらい……私は先輩に甘えてしまっていた。
“ひとりの男の人”として、きちんと考えていなければ、見れてもいなかった。
でも今は……ちゃんと見てる。
ちゃんと見て、私は私の気持ちに素直になって、今ここに立っている。
手を降ろして、先輩はまた背を向けようとしたけど……体半分で振り向いた。
「……ストラップ!もう外していいよ!」
「え……?」
「ずっと付けられてると、期待するから!」
「っ!!」
冗談混じりに苦笑する先輩に、私はストラップのことを知られていた恥ずかしさからか、赤くなる。



