「じゃあ、そろそろ帰る?」
オレンジ色の景色が、やっと黒に染まった頃。
涙の収まった私を見て、藤原先輩がそう切り出した。
「ついでに一緒に花火見たいとこだけど、佳奈ちゃん他に見たい人居んでしょ?」
意地悪に笑う先輩。
誰のことを指しているかは、聞かずとも分かって……私は否定も肯定もせず、少し困った笑顔で返事した。
「どうする?途中まで送っていこうか?」
「あ……いえ、大丈夫です」
「分かった」
先輩はベンチから立つと、私の真っ正面に立って、頭の上にポンッと手を乗せた。
そして、私の顔をじっと見つめる。
口角は上がっていて笑顔……なのに、その目はとても切なそうなもので、胸がチクンと痛んだ。
「じゃあ、気を付けて」
「はい……」
静かに手を離して、私に背を向けて歩き出した藤原先輩。
少しずつ、少しずつ、離れていく距離。
「……」
謝ったのに、許して貰えたのに、まだ心がモヤモヤするのは何故だろう。
先輩の後ろ姿を見ながら、理由を必死で探す……。
「――せっ!先輩っ!!」
先輩が公園を出る一歩手前で、私は声を張り上げて呼び止めた。



