頭の中では、いくつかの言葉が浮かんだ。だけど、何ひとつ口には出せなかった。
私が藤原先輩に言えることなんて、何もない……。
藤原先輩を傷付けた私が言えることなんて――。
引き裂かれるような胸の痛みに、眉間にシワを寄せた時、
「だから、佳奈ちゃんには感謝してるんだよ」
「え……」
思いもしなかったことを言われ、身体中の力が一瞬抜けるけど、
「気付かせてくれて、ありがとう」
そう微笑んだ先輩に、また胸がギュッと苦しくなった。
「そんなっ、お礼を言われることなんてっ……」
してない……と否定する私の視界は、涙で滲んでいた。
胸が苦しくて苦しくて、息が出来ないんじゃないかってくらい苦しくて。
許して欲しかったくせに、だから謝りに来たくせに……“許さないで”って、心から思った。
別れた時、すごく怒られたあの時の方が、随分と楽だったような気がする。
でも、こんなに苦しいのは……
藤原先輩の優しさのせいだって分かってる。
だから、
「……ありがとうございますっ」
私は震える声を、絞り出して言った。



