その瞬間、俯いた反動もあって、涙が太股に一滴落ちた。
「……佳奈ちゃん、顔上げて」
言葉と一緒に、そっと触れられた肩。
従うように、ゆっくりと顔を上げながらも、顔を見られるのは嫌だと思った。
いつものポニーテールにして来たのは、失敗。
どんなに暑くても、髪は下ろして来るべきだった。
泣き顔。それを見られるのが嫌で、無意味だと知りながら私は、目だけを藤原先輩から逸らした……のに、
「素直になったね」
目の前からかけられた言葉に、思わず先輩の顔を見てしまっていた。
素直?私が……?
向けられた言葉に、ただただ目を丸くしていると、
「自分の気持ち、押し殺さなくなったじゃん」
そう言って、藤原先輩は微笑んだ。
頭の中で、ふわっと浮かぶように思い出す一年前。
それは、翔と津田先輩が抱き合ってるのを見たのに、失恋したのに、素直に泣けなかった私――。
「ごめんって、謝らなきゃいけないのは俺の方。気持ち押し殺すな、とか言ってたくせに、岡田とのこと……あんな風に言っちゃってごめん」
今度は先輩が私に頭を下げて……私は喋ると声が震えそうで、ただ首を横に振った。



