「いいよ。俺は大丈夫だから、言って」
藤原先輩は優しい笑顔、優しい声色で、そう促してくれた。
私の中の凍っていた気持ちが、温かさに触れて溶けていくようで……。
「私……翔じゃないとダメなんです」
心の中の想いを、言葉へと変える。
「先輩のこと、本当に素敵な人だって思ってます。付き合ってた時も、これが幸せなんだって……何度も思いました。でも……」
重ねた自分の両手に、ギュッと力を入れる。
「私の頭の中には、いつも翔がいて……先輩と一緒にいても、翔のことでいっぱいで……気が付いたら目で追っちゃっててっ……」
こんなことを言っている自分も、目に溜まった涙も、絶対にらしくない。
だけど、これが“私”。
「翔と付き合うとか、付き合わないとか、そんなことになる前から……私は翔じゃないとダメだったんです」
あの時、翔が私に「付き合う?」なんて吹っかけなくても、私と藤原先輩の関係は、きっと崩壊していた。
「ごめんなさいっ……そんな気持ちのまま、先輩と付き合ってしまって、最悪な形で傷付けて……。本当にごめんなさいっ……」
隣に座る藤原先輩に、私は深く深く頭を下げた。



