藤原先輩と話をしたい日。
それは、いつの間にか始まった長い夏休みも、半分が過ぎた頃だった。
「お母さーん、ちょっと今から出てくるからー!」
玄関で靴を履きながら、大きめの声で「行ってきまーす」と続けて、ドアを開けた。
すると、すぐに目に入ったのは……浴衣姿の女の子。
同い年くらいのその子は、彼氏だろう人の隣で笑顔をキラキラさせて、とても可愛い。
対する私は、Tシャツにショーパン。
「……ははっ」
去年と変わらない、相変わらずな自分の姿に苦笑して、眩しいカップルの後ろを歩き始めた。
羨ましい。
浴衣という“女の子”の特別な姿も、手を繋いで歩く“恋人”という存在も。
でも――。
二手に別れた途中の道。私はカップルとは逆の道を選んで、迷うことなく足を進めた。
行きたい場所はカップルと同じ場所だけど、行かなくちゃならない場所は他にある。
その場所に近づけば近付くほど緊張して、走ってもいないのに息が上がった。
そして、その場所の前で……私は揃えるように足を止めた。



