「いった……」
確かに感じた頬の痛みに、涙が浮かんだ。
夢じゃない……。
翔と話せたことも、
翔の言った言葉も、
夢じゃないんだ――。
トクントクンと静かに、だけど大きく鳴る鼓動。
それを抱きしめるかのように、私はギュッと膝を抱えた。
翔と話した時間は十数分。
その僅かな時間の、翔のちょっとした言葉に一喜一憂した私は、呆れるほどに翔のことが好きみたいで。
“もしかして”って期待して、裏切られたことは何度もあるのに……また期待してる。
でも、今回は本当に期待してもいいんだよね……?
翔の撫でてくれた頭にそっと触れると、堪えている気持ちが溢れそうになった。
私よりも身長の低い翔が、私の頭を撫でるその姿は、不格好だったと思う。
でも、翔の手は大きくて、温かかった――。
『だから、自信持てって』
『だから、先輩とちゃんと話して欲しいんだ』
自分がどうすれば良いのか、何をすべきなのか、翔のおかげでやっと見えてきた気がする。
やっと前に進める。
「……ありがとう」



