「俺は、樋山と藤原先輩が付き合うのは……嫌だと思ってる。だから、先輩とちゃんと話して欲しいんだ」
「……」
翔から引き離そうとした、腕の力が途端に抜ける。
同じく翔の力も弱まって、するりと自然に離れた。
それって……。
胸の外側はドキドキドキドキうるさくて、内側はざわざわして、落ち着かない。
「ねぇ……それってどういう」
キーンコーンカーンコーン……。
一緒に心臓まで吐き出すんじゃないか。そう思うくらいに、やっと吐き出した言葉を、余令のチャイムが見事に邪魔をした。
「……あっ、やべっ!俺、次移動教室だった!じゃあなっ!」
「えっ?ちょっとっ……」
……逃げられた。
階段を一段飛ばしで登っていく、その後ろ姿を見ながら思った。
でも、同時にホッとしている。
だって、これ以上一緒にいたら、心臓がもちそうになかった。
余令が鳴ったということは、私も早く教室に戻らなければならない。
だけど、翔の足音が聞こえなくなるなり、私は全身の力が抜けたみたいに、その場にしゃがみ込んだ。
そして……頬をつねってみる。



