「ほら、そろそろ帰らないと先生に怒られる」 言いながら先輩は、足元の荷物を持ち上げて帰ろうとする。 「はいっ」と短く返事して、俺もボールを体育館倉庫へ運ぼうと、足を動かしたその時だった。 「あ、岡田」 藤原先輩は何かを思い出したように名前を呼ぶと、 「あんまりモタモタしてたら、また佳奈ちゃん奪うから」 優しい笑顔を、イタズラなものに変えて言った。 普段の先輩からは想像つかないその言葉に、俺は思わずきょとんとするけど、 「……奪われませんよ」 すぐに目を細めて、返事した。