13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


アドレスを赤外線送信じゃなく、メモに書いたのだって、断られるのが怖かったから。

直接「交換できない」って言われるより、一方的に渡してメールが来ない方がいい。

積極的にしてる反面で、自分が実は臆病だって事…最近気付いた。

「…」

メモを見たまま、苺先輩は黙り込む。
やっぱりいきなりこういうのって迷惑なんだろうか。

「あっあの…」

「ごめん」って言われるのが嫌で、紛らわそうとした時、

「じゃあ、今からメール送るね」

苺先輩は笑って言った。

「え…」

思っていたのと、正反対の対応に俺は戸惑うが、苺先輩はそんなのお構いなしに、携帯を開いて入力を始める。

「あの…」

道の真ん中だし、メモに書いているんだから、今じゃなく帰ってからでいい。
そう言おうとしたけど、

「送ったよ」

苺先輩の行動は早かった。

携帯を取り出すと、ちょうどピカピカと青いランプが光る。

「届いた…?」
「はいっ!」

俺が元気良く応えると、苺先輩はにっこりと笑った。


ただアドレスを交換しただけ。

女の子のアドレスなんて、山ほど入ってる。

だけど

“苺先輩”

その名前が電話帳に増えた事が

すごく嬉しかった-…。