13センチの片想い。私とアイツの恋の距離

♪佳奈side♪


翔と会うのが嫌だった。
翔と話すのが怖かった。

自分に都合の悪い噂は、いとも簡単に信じてしまいそうになるのに、
都合の良い噂は、「嘘かもしれない」って、信じられなくて。

だから、津田先輩が彼氏と仲直りしたと聞いても、信じることは出来なくて……

翔に呼び止められた時、「泣いてしまうかも」って思うくらい、怖かった――。


……なのに、

「……何?」

ひとり取り残された廊下で、私は小さく呟いた。

『苺先輩と何もないから』

頭の中で繰り返すのは、翔のその言葉――。


何……何なの……?

何でわざわざ、そんなこと私に言うの……?


翔と津田先輩の関係……それは、私が一番気にしていたこと。

だけどそれを翔の口から聞くなんて、思ってもみなかった。

しかも、私は何も訊ねていない。
喋ったのは……翔自身。


「……」

だんだんと熱を帯びる顔を、隠すみたいに口元へ手を当てる。

何期待してんの……?

私が思うほど、翔の発言に意味はないかもしれない。

期待するほどバカだって、分かってる。

分かってるけど、

“嬉しい”

この気持ちを止められそうにない。