「……先輩?」
そんな藤原先輩に、少し慌てて声をかけたのは、
それが、寂しそうな微笑だったから……。
「大丈夫なら、練習しような」
ポンッと俺の肩を叩いて、今度はいつもの笑顔で言うと、先輩は離れて行った。
藤原先輩、どうしたんだろう……。
すごい噂になっているのは事実で、気になっている人は沢山いて、先輩に訊ねられたことは、ごく普通のこと。
でも、今までどんなに噂になっていても、藤原先輩はそれを俺に聞いてくることはなかった。
だから人の恋愛とかそういうの、気にしない人なのかなって思ってた。
……そういえば、藤原先輩って彼女とかいんのかな。
バレー部の男子の間で、恋愛の話になることはよくある。
でも、不思議と藤原先輩のそんな話は聞いたことがなくて、後ろ姿を見ながらぼんやりと考えた。
結局その日、檜山を捕まえることは出来なかくて、
そして迎えた翌日――。
伝えたい言葉が見付かったわけじゃないのに、クラスが違うせいで顔すら合わせることがなくて、
何故だかとても焦っていた。



