13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


翔が好きなのは……津田先輩。

私はそれを知ってて、“付き合っている”という関係だから、私に津田先輩と一緒の所を見られたって、翔は罪悪感なんか感じるはずがない。

それを分かっているから、自分の行動はとても惨めで、情けない。

でも、それでも――

「誰か来るの?」
「え?」
「さっきからドアの方、気にしてるから」

亜耶に指摘されるくらい、私は待ってしまっていた。



だけど、やっぱり翔は来なかった。

代わりに耳にしたのは、津田先輩と西藤先輩が別れたってこと。

詳しく聞けば、西藤先輩は津田先輩の友達と付き合い始めたとかで……

津田先輩は津田先輩で、翔と付き合い始めたと、噂が流れていた。


その噂が嘘か本当かなんて、私には分からない。

分からないけど、一番聞きたくない噂だった。

だって、津田先輩と一緒だった翔は楽しそうで、幸せそうに微笑んでいて……まんざら嘘でもなさそうだったから――。


午後の授業は、翔のことで頭がいっぱいだった。

翔は今、何をしているんだろう。
何を思ってるんだろう。
どんな表情をしているんだろう。

いくら考えても、それは私の想像でしかなくて。

同じクラスではないことが……教室を隔てる一枚の壁が、もどかしくてしょうがなかった。