翔が好きなのは……津田先輩。
私はそれを知ってて、“付き合っている”という関係だから、私に津田先輩と一緒の所を見られたって、翔は罪悪感なんか感じるはずがない。
それを分かっているから、自分の行動はとても惨めで、情けない。
でも、それでも――
「誰か来るの?」
「え?」
「さっきからドアの方、気にしてるから」
亜耶に指摘されるくらい、私は待ってしまっていた。
だけど、やっぱり翔は来なかった。
代わりに耳にしたのは、津田先輩と西藤先輩が別れたってこと。
詳しく聞けば、西藤先輩は津田先輩の友達と付き合い始めたとかで……
津田先輩は津田先輩で、翔と付き合い始めたと、噂が流れていた。
その噂が嘘か本当かなんて、私には分からない。
分からないけど、一番聞きたくない噂だった。
だって、津田先輩と一緒だった翔は楽しそうで、幸せそうに微笑んでいて……まんざら嘘でもなさそうだったから――。
午後の授業は、翔のことで頭がいっぱいだった。
翔は今、何をしているんだろう。
何を思ってるんだろう。
どんな表情をしているんだろう。
いくら考えても、それは私の想像でしかなくて。
同じクラスではないことが……教室を隔てる一枚の壁が、もどかしくてしょうがなかった。



