♪佳奈side♪
――見るんじゃなかった。
頭の中でそう繰り返しながら、急いで教室の中へと入った。
「佳奈ちゃん、大丈夫?」
私の席で待っていた亜耶の言葉で、自分が何をしに行ってたかを思い出す。
片手に持っているのは、一本だけの箸。
お弁当を食べている最中、不意に箸を落としてしまって、洗いに行ったんだった。
私は亜耶に「大丈夫」と頷いて、席に着く。
「あれ?食べないの?」
「うん。もう時間ないし……いいや」
せっかく洗って来たけれど、食欲なんてどこかに消えてしまった。
ランチクロスで弁当箱を包みながら、微かに震える指先。
いっそのこと泣いてしまいたい。
そう思うほど、翔が津田先輩と一緒に昼食を食べている姿が、ショックだった。
だって……津田先輩には彼氏がいるのに。
それに何より、翔にも――。
……なんて、翔との関係は曖昧なものだと思っていたくせに、心の奥ではしっかりと“彼氏”にしていたみたい。
翔が私の見ていることに気付く瞬間、逃げることも出来たのに、そうしなかった。
私だと分かるように、わざと数秒間見つめ続けた。
私は何を期待しているんだろう。
そんなことをしても、翔は私の所には来ないのに。
――見るんじゃなかった。
頭の中でそう繰り返しながら、急いで教室の中へと入った。
「佳奈ちゃん、大丈夫?」
私の席で待っていた亜耶の言葉で、自分が何をしに行ってたかを思い出す。
片手に持っているのは、一本だけの箸。
お弁当を食べている最中、不意に箸を落としてしまって、洗いに行ったんだった。
私は亜耶に「大丈夫」と頷いて、席に着く。
「あれ?食べないの?」
「うん。もう時間ないし……いいや」
せっかく洗って来たけれど、食欲なんてどこかに消えてしまった。
ランチクロスで弁当箱を包みながら、微かに震える指先。
いっそのこと泣いてしまいたい。
そう思うほど、翔が津田先輩と一緒に昼食を食べている姿が、ショックだった。
だって……津田先輩には彼氏がいるのに。
それに何より、翔にも――。
……なんて、翔との関係は曖昧なものだと思っていたくせに、心の奥ではしっかりと“彼氏”にしていたみたい。
翔が私の見ていることに気付く瞬間、逃げることも出来たのに、そうしなかった。
私だと分かるように、わざと数秒間見つめ続けた。
私は何を期待しているんだろう。
そんなことをしても、翔は私の所には来ないのに。



