13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


何で……。

サァーっと血の気が引いて、ドクンドクンと強くなる鼓動。

まるで、とても悪いことをしている所を見られたような感覚。

2階から俺を見ていたのは――

「裕……くん?」

「……え?」

隣から聞こえた小さな声に、俺はハッと苺先輩を見る。

苺先輩は、同じく向かい側の校舎を見ていて……でも、目線の位置が、さっきの俺とは少し違う。

ゆっくりと苺先輩の視線を辿ると、見ているのは3階ではなく、2階だった。

そこには……こっちを見て、立っている男子。

俺と目を合わせると、逃げるどころか、少し睨んできたその人は、

西藤先輩――。


「あ……」

後退りするように、苺先輩は足を一歩、二歩と後ろに進めると、

「ごめん、翔くん。あたし……行ってくる」

そう告げて、弁当箱も持たずに走り出していた。

「いちっ……」

もちろん俺も、直ぐ様追いかけようとするけど、

フッと浮かんだ、ある人の顔。

それは……西藤先輩の他に、俺と苺先輩の様子を見ていた、もうひとりの人。

……檜山。


西藤先輩は、きっと俺達の仲を疑っている。
だから、すぐに誤解を解かなきゃならないのに……

苺先輩よりも、檜山を追いかけたいと思う自分がいた――。