そんな姿を見ても、もう胸は痛まなかった。
ただ“苺先輩が幸せそうで良かった”と、目を細めている自分。
苺先輩と西藤先輩は、ずっと続いて行くんだと、続いて行って欲しいと、心の底から思えていた。
だけど……
それは、下駄箱で苺先輩と話してから、数週間後の出来事だった。
午前中最後の、四時限目の授業が終わって、生物室から教室へと戻る途中。
真っ正面から、よく知った人が駆け足で向かって来ていた。
その人は……中野先輩。
「こんにちは」
俺がすれ違いざまに挨拶すると、中野先輩は何やらとても急いだ様子で、軽く手を振って通り過ぎた。
中野先輩、どこに行くんだろう。
さほど気になるわけじゃないけど、ぼんやりと思ったその時、
「ごめんっ!翔くん!」
まさにその中野先輩が、後ろから肩をつかんで引き止めた。
「どうしたんですか?」
いきなり戻って来たことに、驚きながら聞くと、
「あのねっ、もし暇だったら、今から苺の所行ってあげてくれない?」
「え……」
頼まれたことに対して、更に驚いた。
「何か元気なかったから、話聞いてあげて」
俺が理由を問うよりも早く、そう言って困ったような笑顔を浮かべる中野先輩。



