……苺先輩?
冷たいばかりだった空気が、やんわりとした暖かさを持ち始めた頃。
新入生がいることにも慣れて、自分が2年生になったことを強く実感するようになった頃の、とある放課後。
部活に向かう途中、通り過ぎようとした玄関で、久しぶりにキミの姿を見付けた。
つま先立ちで、下駄箱の上に必死に手を伸ばしている苺先輩。
何か取ろうとしてんのかな……。
そう察した俺の足は、自然と苺先輩の元へと向かう……けど、
「っ!」
俺が辿り着くよりも先に、苺先輩は勢いを付けて跳んだ。
伸ばした手の先にあったもの……それには見事届いたみたいだけど、上手く取れなかったようで、
ガンッ
っと、音を立てて落ちて、跳ね返った。
……靴?
偶然にも、俺の足元に転がって来たそれは、小さなローファー。
「あちゃー……」
聞こえた可愛らしい声と、そのローファーのサイズに微笑みながら拾って、
「大丈夫?」
手を伸ばそうとした苺先輩に、差し出した。
「はい、ありがとうござ……あっ、翔くん」
苺先輩は、今やっと俺の存在に気付いたみたいで、
「ひ、久しぶり」
驚いた顔をした後、ほんの少しぎこちない笑顔で笑った。



