13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「檜山らしー」

そう言って、翔は笑っていた。

……そんな顔、しないでよ。
胸がきゅうっと、苦しくなる。

「普通のチョコだから、味とかそんな美味しくないよ」

素っ気なく言ってみるけど、「いいよ」と、翔は構わずチョコをひとつ手に取った。

私があげたチョコは、バレーボールのチョコレート。
丸いミルクチョコを、バレーボール模様の銀紙で包んだだけの、単純なもの。

見付けた瞬間、「これだ」って思った。だって、私達を繋ぐのはバレーだから。
でも、こんな風に目の前で食べられるなら、有名パティシエがどうのとか唱われている、もっと味にこだわったものを選べば良かったと後悔する。

だけど、

「うまっ」

何でもないただのチョコを、翔は美味しいと言ってくれて、また胸が苦しくなる。

「檜山も食べる?」
「えっ、私いい……」

断ろうとしたのに、差し出されたチョコ。

私はそれを黙って受け取った。

「檜山、ありがとなっ」

「……うん」

今が夜で良かったと、頷きながら、チョコの包みを開きながら思った。

私の目は潤んでいて、顔は……きっと赤いから。