浮かれていた気分は一瞬にして冷めて、ドキドキしていた鼓動はドクンドクンと、苦しいものになる。
どうしよう……。
思いながら私が手を伸ばしたのは、肩にかけていた鞄。
ファスナーは開きっぱなしになっていて、手はそのままスルッと入り、中を覗かなくても探していたものは見付かった。
ゆっくりと取り出したそれは、白の包装紙に赤いリボンでラッピングされた、長方形の箱。
さっき手にしていたものと、全く同じ。
翔にあげたものと同じ、バレンタインチョコ――。
都には“自分用”なんて言ったけど、本当は藤原先輩を思い浮かべて買った。
渡せるなんて思ってないし、
先輩だってもう、私からなんて欲しくないだろうけど……、
用意せずにはいられなかった。
……トッ
小さく足音が聞こえて前を向くと、玄関を出て帰ろうとする先輩の後ろ姿が見えた。
暗闇の中にひとりで消えようとする、その背中が心を切なくさせる。
先輩の隣にいない私。
約束したのに、先輩にチョコをあげれなかった私。
そんな私は、今から翔と一緒に帰ろうとしていて、
翔にはちゃんとチョコを渡した。
決して翔と想いが繋がったわけじゃないけど、
自分の行動が滑稽に思えて……。



