13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


浮かれていた気分は一瞬にして冷めて、ドキドキしていた鼓動はドクンドクンと、苦しいものになる。

どうしよう……。

思いながら私が手を伸ばしたのは、肩にかけていた鞄。

ファスナーは開きっぱなしになっていて、手はそのままスルッと入り、中を覗かなくても探していたものは見付かった。

ゆっくりと取り出したそれは、白の包装紙に赤いリボンでラッピングされた、長方形の箱。

さっき手にしていたものと、全く同じ。

翔にあげたものと同じ、バレンタインチョコ――。


都には“自分用”なんて言ったけど、本当は藤原先輩を思い浮かべて買った。

渡せるなんて思ってないし、
先輩だってもう、私からなんて欲しくないだろうけど……、

用意せずにはいられなかった。


……トッ

小さく足音が聞こえて前を向くと、玄関を出て帰ろうとする先輩の後ろ姿が見えた。

暗闇の中にひとりで消えようとする、その背中が心を切なくさせる。

先輩の隣にいない私。
約束したのに、先輩にチョコをあげれなかった私。

そんな私は、今から翔と一緒に帰ろうとしていて、
翔にはちゃんとチョコを渡した。

決して翔と想いが繋がったわけじゃないけど、

自分の行動が滑稽に思えて……。