「……」
自分に自分で驚いて、茫然とする。
檜山とは長い付き合いで、悲しそうな顔に心配する気持ちは、間違ってはいないと思う。
ただ、驚いたのは……苺先輩のことよりも、檜山のことを考えていたから。
何で……。
自分の思考が信じられなくて、心臓はドクンドクンと、ほんの少し強く打つ。
何なんだよ。
調子狂う……。
それから、余計に檜山のことが頭から離れなくなった。
いつもはもう少しやりたいと思う部活も、今日は早く終わってほしくて。
教室に呼び出した檜山。
檜山に会えば、呼び出しの理由を知れば、心の中がスッキリするような気がして――。
「翔、帰ろーぜ!」
「わりぃ、俺ちょっと用事があって……」
体操服を詰めた鞄を肩にかけながら、いつも一緒に帰る友達の誘いを断る。
「用事?……あ、女だろ?翔くんはいいなー」
「バッカ!そんなんじゃ……じゃあな!」
深く詮索される前に、俺は部室を出た。
“そんなんじゃない”
そう言おうとしたのに、何故かとっさに言えなくなった。
いや、だって檜山は女だし……。
自分の行動に、自分で言い訳している。
檜山を女だと意識したことなんか、一度もなかったのに――。



