いやいや、まさか。
だってそれって、檜山が俺のこと好きみたいじゃん。
それはない、絶対にない。
それに、檜山には誰か好きな奴が――。
思い出した瞬間、「そうか」と思った。
悲しそうな顔は、そいつを思っての表情だったのかもしれない。
俺と好きな奴を、重ねたりしたのかもしれない……。
そっか、そういうことか。
何だ……。
自分の憶測に妙に納得して、肩の力と気が抜けた。
だけど、どうしてだろう。
檜山の悲しそうな顔が、頭から離れなくて――。
放課後、体育館に向かいながらも考える。
部活が終わった後、教室に来てと、檜山からの呼び出し。
一体何なんだろう……。
今日はバレンタインで、普通に考えると“チョコ”だ。
でも、檜山に限ってそれはあり得ない。
中学の時から一緒にいるけど、檜山からは一度たりとももらったことはないから。
じゃあ……。
ふっと頭を過ったのは、逆のパターン。
それは、“別れる”ということ。
これなら……。
あり得る、そう思った時だった。
「いたいた!」
体育館を目の前にして、聞こえた声。
俺がパッと顔を上げると、目の前にいたのは……
「中野先輩!」



