「翔!お前に来客!」
授業の合間の休憩時間。
クラスメイトの声に、俺はハッとドアを見た。
目が合って、満面の笑顔で大きく手を振るのは……同中出身の、他のクラスの女子。
やっぱ違う……か。
俺は肩を落として、席を立った。
「はい!ハッピーバレンタイン!」
「……ありがとう」
俺は差し出された、小さな赤い袋を受けとる。
「どうしたの?元気ないじゃん」
「そんなことねーよ?」
指摘されて、慌てて笑顔を作るけど、
「えー、絶対元気ないよ。毎年今日はめっちゃテンション高かったもん!あ、今年は少ないんでしょ?」
去年までの様子をよく知る女子は、あっさりと否定して、ニッと笑う。そして、
「ほら、あのちっさい先輩?あの人ばっかと仲良くするから、こうなるんだよー」
バシッと俺の腕を一度叩いて、「みんなにサービスしないと!」と、ケラケラ笑った。
別にチョコの数が少なくて、落ち込んでいるわけじゃない。
むしろ、これ以上欲しくない。
なのに、落ち込んでいるように見えるのは……期待している自分がいるから。
もらえないって、来ないって、頭では理解しているのに、誰かが来る度に期待している……。



