「うっわ!そういうの、うぜー」
友達は俺の肩を軽く突き飛ばして、その隙に俺はチョコを鞄へ入れた。
本当に、すっかり忘れていたバレンタイン。
中学の時は何個もらったとか、友達と勝負したりして、結構気にしていたのに……今年は頭の中に、欠片もなかった。
それに、もらったチョコだって、数だけ頭に入れていて、あとは友達に平気であげていた。
だけど……今年はそうすることが、無性にためらわれた。
チョコ自体が欲しいわけでもなければ、あのクラスメイトが好きなわけでもない。
ただ、俺のことを想ってくれてるのかな……ってことと、「返事はいらない」と、始めから諦めた様子が、俺を切なくさせた。
気持ちには応えられないけど、きちんと受け取っておきたいと思った。
こんな風に思うようになったのは、“片想いの気持ち”が痛いほど分かるからかもしれない。
「翔ってさ、毎年どのくらいもらってんの?」
ウザいと言いながらも、聞いて来た友達に、
「さぁね」
俺はわざと、余裕な笑顔を浮かべた。
何個もらえたとか、数的なことはどうだっていい。
本当に欲しいのは、好きな人からただひとつ――。



