「……」
返事とかいらない?……返事?
意味が全く分からず、手にした箱をぼーっと見ていると、
「翔!朝からやるじゃん!」
俺の首に腕をかけるようにして、後ろから話しかけて来たのは、バレー部の友達。
「やるじゃん……って、何が」
「しらばっくれるなよー。それ、チョコだろ?」
チョコ……。
「……あ」
「何知らなかったみたいな顔してんだよ。ムカつくー」
そう言いながら、笑う友達。
「本当に知らなかったんだよ」と、心の中で呟いた。
そうか……今日は2月14日、バレンタインデーだったんだ……。
手に持ったチョコレートをもう一度見て、走り去ったクラスメイトの後ろ姿に目を向ける。
「どうすんの?」
ニヤニヤしながら聞く友達に、
「別に……」
返事はいらないと言っていたし、俺は考えることなく、ぼんやりと答えた。
「ひっでー。じゃあ、そのチョコちょうだい!」
友達は俺の手から、チョコを奪おうとするけど、俺は避けるようにチョコを上に上げた。
「何だー。いらないわけじゃないんだー?」
やっぱりニヤニヤと、嫌な笑みを浮かべてからかう友達。
「何個もらったか、分かんなくなるだろ」
軽く舌を出して、俺は咄嗟にごまかした。



