「……」
都は固まって、しばし沈黙した後、
「……ちょっと待って。今、何て言った?」
声を震わせながら、聞いてきた。
「だから、先輩とは別れて、翔と付き合ってるんだってば」
私が投げやりに、もう一度答えると、
「えーーっ!? うそっ!?」
都は退りしてしまうほど、大きな声で驚きをあらわにした。
「こんな、ついたって虚しいだけの嘘つかない」
“翔と付き合ってる”
この言葉が自分でも信じられなくて、恥ずかしくて、くすぐったいのに。
「なっ!何で!? どうしたらそんな展開になったの!?」
「どうしたらって……」
全てを話すのは難しくて、コートをつかんで距離を縮める都に困る。
だけど、簡単に言うとすれば……
「私が翔を諦めきれなくて、先輩と付き合ってたのに、都合の良いことしちゃったの」
私が言ったとたん、都の表情から興奮した様子はサッと消えて、コートをつかんだ手は、するりと離された。
「佳奈……」
思い詰めた表情で、私を見る都にビクビクしてる。
「自己中に先輩フっておきながら、翔へのチョコ買いに来るとか、本当都合良いよね」
都に心の中で思われるのが嫌で、自ら言葉にした。



