「亜耶?」
亜耶のその表情の意味が分からなくて、私は名前を呼んだけど、
「そろそろ帰ろ」
切なそうな表情をフッと消して、亜耶はニコッと普通に笑った。
「バレンタイン……か」
凍えるくらい寒い夜道。
コートに両手を突っ込んで、私は空を見上げて呟いた。
暗くて見えないけど、たぶん曇っているのだろう。星は見えない。
「どうしようかな……」
少し大きく声を出しても、返事はない。
ふと立ち止まって、ゆっくり振り返ってみる……けど、当然誰もいなくて、歩いてきた道が広がるだけ。
こうして、ひとりで帰ることにも慣れてしまった。と、言うより、もともとひとりの方が、楽で好きだった。
なのに、誰の姿を求めているんだろう。
「あー……もう、ムカつく!」
私はくるりと前を向いて、また歩き出した。
いつもより多い独り言。
それは、自分の気持ちを抱えておくのが、苦しくなってきたから。
口に出せば、少しは軽くなるような気がして……。
「……」
携帯をつかんで、ポケットに突っ込んだ手を出した。
震える指先でメールを打つ。
送信先は都。
用件は――。



