ひとり黙々と空気を入れる藤原先輩のもとに、ある男子が駆け寄って来た。
先輩と並ぶと、一段と小さく見える彼は……翔。
ひと言ふた言言葉を交わして、翔は先輩を手伝い始めた。
藤原先輩が私のお願いを聞く理由なんてない。むしろ聞かない方が、理にも適ってるかもしれない。
だけど、聞いてくれてる。
核心が持てるわけじゃないけど、ふたりの様子を見て、そう感じた。
「佳奈ちゃん、本当は藤原先輩のこと、まだ好きなんじゃないの……?」
ふと耳に入った小さな声。
私は驚いて、引き戻されるように、そっちを向いた。
「ごめん。何か、すごく切なそうな顔して見てたから……」
申し訳なさそうに言ったのは亜耶で、他の友達たちはいつの間にか、近くにいなくなっていた。
切なそうな顔……。
「……違うよ」
私も小さな声で返事して、また翔と先輩の方を見た。
私がそんな顔をしていたのは、先輩を好きだからじゃない。
先輩が……優しいから。
その優しさに、胸を痛めずにはいられなくて、顔に出てしまったんだと思う。
「……そっか」
聞こえた返事に、また亜耶を見ると、
今度は亜耶が切なそうな、悲しそうな微笑を浮かべていた。



