13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「何でか……聞いてもいい?」

恐る恐る言った亜耶に、

「他に好きな人がいるんだ」

私は苦笑しながら、さらりと答えた。

適当に理由を言って、藤原先輩が悪く思われたりしたらいけないから、変に嘘はつけない。

悪いのは私。
私はどう思われても仕方がない。

そう思っているのに、「今その好きな人と付き合ってる」とまで言えないのは、やっぱり自分が可愛いからなのか。

……ううん、違う。


「佳奈の好きな人って、岡田くんだったりしてー?」
「……っ!?」

背中をバシッと音がするくらい叩いて、顔を覗き込んできた友達に、心臓が止まりそうになった。

「やーだ、そんな驚いた顔しないでよ!冗談、冗談だって!」

ケラケラ笑う友達に、私は「あはは」と無理矢理笑う。

「佳奈と岡田くんは、有り得ないもんね!」

友達の何気ない言葉に、胸がチクンと痛んだ。

悪気があって言っているわけではないのは、分かってる。

“私と翔が付き合うなんて有り得ない”

他人の目に、そう写ってるだけの話。


そして私自身も、そんな風に思っていた。