「何でか……聞いてもいい?」
恐る恐る言った亜耶に、
「他に好きな人がいるんだ」
私は苦笑しながら、さらりと答えた。
適当に理由を言って、藤原先輩が悪く思われたりしたらいけないから、変に嘘はつけない。
悪いのは私。
私はどう思われても仕方がない。
そう思っているのに、「今その好きな人と付き合ってる」とまで言えないのは、やっぱり自分が可愛いからなのか。
……ううん、違う。
「佳奈の好きな人って、岡田くんだったりしてー?」
「……っ!?」
背中をバシッと音がするくらい叩いて、顔を覗き込んできた友達に、心臓が止まりそうになった。
「やーだ、そんな驚いた顔しないでよ!冗談、冗談だって!」
ケラケラ笑う友達に、私は「あはは」と無理矢理笑う。
「佳奈と岡田くんは、有り得ないもんね!」
友達の何気ない言葉に、胸がチクンと痛んだ。
悪気があって言っているわけではないのは、分かってる。
“私と翔が付き合うなんて有り得ない”
他人の目に、そう写ってるだけの話。
そして私自身も、そんな風に思っていた。



