13センチの片想い。私とアイツの恋の距離

♪佳奈side♪


「佳奈ちゃんは、藤原先輩にチョコあげるんだよね?」

部活終了後。1年生みんなで、コートを片付けていると、急に話を振られた。

チョコ……バレンタインの話。
そういえば、もうそんな時期だっけ。

「藤原先輩とは……」
「亜耶(あや)」

私が“別れた”と言うより早く、近くにいた友達が咎めるように、話を振った子の名前を呼んだ。

「え……何?」

肩に届くくらいの長さの髪を、横でひとつに結んでいる亜耶は、本当に知らないようで首を傾げる。

「もー……」

友達は困った表情を浮かべ、ちらりと私の顔を見たから、「大丈夫」と、笑って見せた。

「先輩とは、別れたんだ」

「え……え……えーっ!!」
「亜耶、うるさいっ」

驚く亜耶の頭を軽く叩いて、友達は畳んだネットを倉庫に返しに行った。

「ごめんね、何も知らなくて……。いつから?」
「学校始まってすぐ、かな」
「え……。クリスマスの時、あんなに良い感じだったのに?」

亜耶の言葉に目を見開くけど、

思い返せばクリスマス、回ってきた先輩のプレゼントを私にくれようとしたのは、亜耶だった。