13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


ゆっくり振り返ると、私の2メートルほど後ろに、翔の姿。

「樋山みたいなのに倒れられたら、みんなの邪魔じゃん」

いつもの憎まれ口だけど、私を心配してくれてることは、ちゃんと伝わっている。

――だから嫌なのよ。

私がまた前を向くと、廊下には授業の始まりを知らせるチャイムの音が響いて、

「サボりたかっただけでしょ」

背中越しの翔に、私もまた憎まれ口を叩いていた。


翔は優しい……誰にでも。

だから、廊下で気分を悪くしていたのが私じゃなくても、保健室へ連れて行ったんだと思う。

分かってるから悔しい。
分かってるのに悔しい。

翔が真っ青と言った私の顔は、
今はきっと真っ赤。



「んじゃ、先生には言っとくから」

保健室のドアの前に立った私を見て、翔が言った。

「……」

“ありがとう”
どうしてか、この言葉が口に出来ない。

「樋山?」

ドアを開けようともせずに、ただ立ったままの私。

「翔は……津田先輩にフラれて、どう思った?」
「は?」
「津田先輩のこと恨んだり、憎んだりした……?」