え……。
だから、しょうがないとばかりに、目線を上げて、友達を追い掛けようとした瞬間だった。
こっちに向かって歩いて来る、二人の男子。
その片方の人が視界に入った瞬間、ビクッとして足が止まった、身体が固まった。
友達と笑いながら、次第に近付いて来る、背の高いその人は、
藤原先輩−…。
…やだ!どうしよう。
ドクンドクンと鳴る心臓。
それを隠すみたいに、胸の前で教科書をギュッと抱く。
自分でも可笑しいくらい、気が動転している。
とにかく、立ち止まってたら変。
普通に…しなきゃ。
ゆっくりと足を前に進めてみる…けど、自分の足じゃないみたいに、スムーズには動かない。
それでも近付く、私と先輩の距離。
嫌だ……。
「……」
顔がハッキリと確認出来る距離に、私は俯いた。
だけど−…
通り過ぎる…正にその瞬間、私は顔を上げて、先輩の表情を確認していた。
そして……愕然とした。
別に睨まれたりとか、したわけじゃない。
胸を刺すような、悲しい笑顔を向けられたわけでもない。
ただ、通り過ぎただけ。
私のことなんか見向きもせずに、まるで知らない人のように。



