ぬいぐるみのそれは、表情なんてあるはずないのに、悲しそうに見えて…
ズキンと胸が、また痛む。
付き合った期間は、3ヶ月にも満たない。
そんな短い間に、先輩が私にくれたプレゼント。
物だけじゃない…私を想う気持ちも、沢山くれた。
あの夏の夜から始まって、
告白に頷いたら、喜んで抱きしめてくれた先輩。
修学旅行の前に、「浮気しちゃダメ」と、不安を見せてくれた先輩。
修学旅行のお土産に、深海珊瑚のストラップをくれて…「どこにも行かないで」と、キスした先輩。
クリスマスには、私だけのプレゼントを、用意してくれていた先輩。
…何で気付かなかったんだろう。
藤原先輩はこんなにも、私のことを想ってくれていたのに−…。
「…っ…ふっ……」
思い返せば、涙は更に溢れて止まらない。
泣いて恋を終わらすことを、教えてくれたのは先輩だった。
私は今、藤原先輩との恋を終わらそうとしているんだろうか…。
あの夏の夜、翔への想いを終わらせたはずなのに、
何で藤原先輩を好きになれなかったんだろう−…。
泣きながら、私は携帯とストラップの繋ぎ目に、手をかけた。



