藤原先輩は、いつも私に笑顔を向けてくれていて…
だから、怒らないとでも思ったの…?
…呆れるくらい、都合良すぎ。
「最低…」
こんな別れ方も、私自身も。
歯医者での治療が終わって、帰宅途中、あの公園の横を通り過ぎた。
あの夏の夜、失恋した私を、藤原先輩が慰めてくれた場所。
あの時から先輩は、私のことを考えて、私の気持ちを分かってくれていたのに、
私は藤原先輩の名前も、何も知らなかった。
何も知ろうとしなかった。
「ただいまー…」
玄関で靴を脱いでいると、キッチンからお母さんが顔を覗かせた。
「お帰り。ご飯食べる?」
「いらない」
素っ気ない返事をして、私は自分の部屋へと向かおうとする。
「何?そんな食べれないような治療はしてないでしょ?」
「した」
不審に思うお母さんに、即答する…けど、
「どうしたの…?」
私の顔を見たお母さんが、心配を口に出したような声を上げた。
優しくされると、苦しくなる。
立ち止まってしまいそうになる。
だけど、
「…何でもないっ」
私は顔を背けて、自分の部屋へと逃げ込んだ。



