13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


藤原先輩は、いつも私に笑顔を向けてくれていて…

だから、怒らないとでも思ったの…?

…呆れるくらい、都合良すぎ。


「最低…」

こんな別れ方も、私自身も。



歯医者での治療が終わって、帰宅途中、あの公園の横を通り過ぎた。

あの夏の夜、失恋した私を、藤原先輩が慰めてくれた場所。

あの時から先輩は、私のことを考えて、私の気持ちを分かってくれていたのに、

私は藤原先輩の名前も、何も知らなかった。

何も知ろうとしなかった。



「ただいまー…」

玄関で靴を脱いでいると、キッチンからお母さんが顔を覗かせた。

「お帰り。ご飯食べる?」
「いらない」

素っ気ない返事をして、私は自分の部屋へと向かおうとする。

「何?そんな食べれないような治療はしてないでしょ?」
「した」

不審に思うお母さんに、即答する…けど、

「どうしたの…?」

私の顔を見たお母さんが、心配を口に出したような声を上げた。

優しくされると、苦しくなる。
立ち止まってしまいそうになる。

だけど、

「…何でもないっ」

私は顔を背けて、自分の部屋へと逃げ込んだ。