13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


何……?

先輩の顔を見たくない。怖い。

だけど、無視することも出来なくて、目線を伏せたまま、ゆっくりと振り返る。

「…佳奈ちゃんってさ、俺の名前知ってる?」

「え……」

唐突すぎる質問に、思わず目線を上げた。

そして目に映った先輩の表情は…

物寂しげな、笑顔。

「っ−…」

それを見た瞬間、胸がぎゅっと苦しくなって、泣きそうになった。

やだ……そんな顔、やだ…。

「知らないでしょ」

私は何も答えていないのに、先輩は笑ってそう言うと、今度こそ背中を向けて、立ち去った。


藤原先輩の……名前。

それくらい知ってるよ…と、頭の中に名前を浮かべようとする。

だけど、どれだけ必死に思い出そうとしても、浮かんでこない。

「な…んで…」

“知らない”の−…?


最後に見せた先輩の笑顔と、名前を知らないという事実が、胸を押し潰す。

苦しい……痛い…痛い。


でも、

一番痛いのは私じゃなく、藤原先輩。


私…何してんの?

「別れたい」と言って、先輩が快く受け入れてくれるとでも思っていたんだろうか。