翔の前と同じ…。
言いたいことを…また、言えないまま…雰囲気に流される?
−…そんなのダメ。
藤原先輩と翔、二人と付き合っている状態の私。
このままで良いわけがない。
先輩に好きと言われても…私は……。
自分の気持ちが固まっている以上、ちゃんと伝えなきゃいけない。
…それが、先輩を傷付ける結果でも。
震える手に力を込め、ギュッと拳を作る。
「あの…私っ…」
「佳奈ちゃん、こっち」
「えっ?」
やっとの思いで口にした、私の言葉を遮り、先輩は私の腕を掴んで、引っ張るように歩き出す。
「…先輩っ?」
急に生まれた、“怖い”という感情。
それは、強く掴まれた腕のせい。
今まで何度も、腕を掴まれたことはある。だけど、痛いと感じるほど、強い力は初めてで…。
連れて来られたのは、体育館裏。
足を止めても、先輩は腕を離してくれない。
やだ…。
ふたりっきりの、静かすぎる場所。
言いたいことが、また自分の口から、遠ざかるような気がして、
「せんぱ…」
そうなる前にと、呼び掛けようとした…その瞬間、
先輩は掴んだ腕を引いて、私を引き寄せた。



