「…先輩の話は何ですか?」
言わなくちゃ…そう思いながらも、逃げてしまった。
ううん、ちゃんと言う。
ただ、顔を合わせたばかりで、切り出しにくくて…ほんの少し、心を落ち着かせる時間が欲しかった。
「俺の話はね…」
私の顔をじっと見る、藤原先輩。
そういえば、自分のことでいっぱいで、先輩からの“話”の内容を想像することさえ、忘れていた。
何…だろう。
真面目な先輩の表情に、何だか凄く嫌な予感がして、息を飲む私に、先輩はふっと微笑んだ。
そして、
「佳奈ちゃんが好きだよ」
え……。
「何…ですか、急に…」
顔が引き攣る、声が震える。
「話。佳奈ちゃんが好きだよってこと」
「それだけ……ですか?」
「うん。忙しいのに、そんなことで呼び止めちゃって、怒った?」「いえ……」
微笑む先輩の顔を、私は真っ直ぐ見れない。
好き…なんて、言わないで。
私が今から…今から先輩にしようとしている話は−…。
「それで、佳奈ちゃんの話は何?」
「え……あ…の…」
どうしよう−…。
自分の口なのに、そうじゃないみたいに動かない。



