昨日歯医者に行けなかった私は、今日行くことになった。
だから、今日も藤原先輩と会わなくて済む…。
そんなズルイことを考えてしまう私を、神様が見逃してくれるわけはなかった。
それはお昼休み。
「佳奈、お客さん来てるよ」
食べ終わったお弁当を片付ける私に、クラスメートが声を掛けた。
お客さん…?
誰…?
「−……」
教室のドアの前に立った人を見て、私の息は止まる。
目が合って微笑んだその人は…藤原先輩だった。
「…どうしたんですか?」
教室を出てすぐの廊下。
チラチラと、周りを確認しながら口を開いた私。
手には、冷や汗をかいていた。
先輩が教室に来るなんて、珍しくて…何だか怖い。
「今日は部活出る?」
「いえ、今日もちょっと無理で…」
頭上で「そっか…」と、呟く声が聞こえた。
私は先輩の顔を、見れない…。
早く…早く帰って。
ドクン、ドクンと、疼く心臓。
子供のとき、イタズラをしてしまった後の心境に、よく似てる。
「じゃあさ、放課後。10分でいいから、時間ないかな?…話があるんだ」
「え……」



