13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「数学の教科書忘れたから、借りに」

それでドアの前に居たわけか…と、納得する。

「…マジでチャイム鳴るから、離してくんない?」
「っ…!!」

自分がまだブレザーを掴んでいたことに、言われて気付いて、

「だったら早く行けばっ!」

焦った私は、突き放すように手を離した。

「引き止めたの、檜山だろ!?」

本当に時間がなく、そのまま教室を出ていく翔に、ベーっと舌を出す。

姿が見えなくなると、ストンと肩の力が抜けた。

「何よ…」

何だか泣きたいのは、自己嫌悪。

翔を前にすると、言いたいことが言えなくなる自分が嫌だし、

何より、“期待”していた自分に失望した。

藤原先輩のこともあって、苦しいくらい悩んでいるはずなのに、
翔が“彼女”として、意識してくれるのを、心の奥で期待していた。

でも、翔は何とも思っていないみたいで、それにムカついたなんて……更に最低。

ドサッと、荷物を自分の机の上に落として、倒れ込むように椅子に座った。

そして、携帯を開く。

新着メールも着信も、何も映されていないディスプレイに、ホッとする。