だけど、どんなに憂鬱でも、行かないわけにはいかない。
自分の中の良心と、過ぎていく時間には逆らえなくて、私は教室の前に立っていた。
開け放たれたドア。
ここを潜って中に入れば、もうひとり会いたくない人が居る。
「……」
改めて考えると、すごく緊張してきて、胸が苦しい。
こんな所で、立ち止まるんじゃなかった。歩いて来た勢いで、さっさと中に入れば良かった。
そんな後悔をしていると、
「おーはよっ!」
「っ!?」
背後から明るい声で、挨拶を掛けられて、私はビクッとして振り返る。
「こんな所で何してんの?早く入らないとチャイム鳴るよ?」
首を傾げて、不思議そうに私を見るのは、クラスメートの女子で、
「早く入った入った」
背中を軽く押され、半ば強制的に教室の中へと入れられた。
「ちょっと−…」
「押さないでよー」と、クラスメートに言うつもりだった。
だけど、私の口は言葉を失い、作ろうとした笑顔はサッと消える。
それは、目の前に会いたくない人…翔が居たから。
教室に入って来たばかりの私と、向き合う形で翔は目の前に居た。



