「わっ!」
考えごとをしながら歩いていると、体育館へ入ってすぐの所で、人とぶつかった。
「…先輩っ!?」
見上げると、それは藤原先輩で、驚きと同時に、ヒヤッと嫌な汗をかく。
ヤバイ…檜山と喋ってるとこ、見られてたかな…。
サボりだと思われたかもしれない。
「遅くなって、すみません!」
咎められる前に…と、頭を下げて謝ると、
「あぁ…うん」
藤原先輩は、ぼーっとした覇気のない顔で、返事をした。
あれ……?
想像していたものと違う反応に、初めて見る先輩の表情。
「何か…ありましたか?」
遠慮がちに聞いてみると、
「…いや、何でもない。練習戻ろう」
藤原先輩は思い出したように、いつもの爽やかな笑顔を向けた。
それは、小さすぎるサインで、
先輩も疲れてんのかな…くらいにしか思わず、
俺は全く気付かなかった。
藤原先輩の気持ちも。
檜山の気持ちも。
自分が今、最低なことをしてしまっていることさえも−…。



